母娘雑記帳‐つくば市・榊原動物病院発行

榊原動物病院の母娘獣医師の日常
オニといぬ
こんにちは
今年、最初の記事となりました。本年もよろしくお願い申し上げます。
もうお正月もすっかり過ぎてしまいもう節分なのですね。

節分といえばオニなので調べてみると、オニは鬼門(丑と寅のあいだ。つまり北東)に住んでいるからで、オニは牛(丑)の角とトラ(寅)の牙を持つんだそうです。そしてトラの皮のふんどしを履いているのがオニの正装だそうです。
ぼんやりと頭に浮かんでいたのは頭に角が一本生えていてヒョウ柄のパンツを履いているオニでしたので、調べてみて色々修正されました。
往年の名キャラクター『ゴロ・ピカ・ドン』とか名曲『おにのパンツ』が惑わせるのかもしれませんね。
フニクラ・フニクラ



動物の精神疾患にも触れた記事があったので読んでみました。

Many animals can become mentally ill

http://www.bbc.com/earth/story/20150909-many-animals-can-become-mentally-ill
多くの動物が精神疾患を抱える

私たちひとは不安や抑うつなど様々な精神的な問題を抱えてきたが、それは他の動物種でも同様である。

フリントは母親のフローを亡くした時、大きな衝撃を受けた。彼は引きこもり、宙を眺めてばかりいた。彼は食べられなくなり弱ってしまった。そして数日後、彼は母親が横たわっていた場所で死んでしまった。

フリントはタンザニアのコンべ国立公園に住むチンパンジーだった。彼の話しは霊長類学者のジェーン・グドールによって伝えられ彼女はフリントがうつ病に苦しんでいたと主張している。

多くの動物は精神的な問題で苦しむことがあるように見える。
ペット、動物園で飼育されている動物、サーカスにいる動物、いずれの場合であっても過剰に悲しむことや不安など心を病むことがある。

精神的な問題を抱えるのはひと特有のことと考えられることもある。しかし、それは間違っている。動物においてもひとと同様に精神疾患を抱えている証拠が提示されることが増えている。
これら不幸な動物たちにより、私たちひとがなぜ精神疾患を抱えることになるのかを理解する助けになっている。


We don't know what's going on in this orangutan's mind (Credit: Edwin Giesbers/NPL)
オランウータンの心になにが起こっているかはわからない。


ペットが仲間を亡くしたあとに悲しんでいるという話しはよく聞く。ときには、彼らにとって回復にはあまりにも大きい喪失により死んでしまうこともある。ーフリントのように。


”チンパンジーにおけるうつ病や心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発見した科学者がいる。

しかし、動物における精神疾患は多くの様相を見せる。じぶんで羽を抜いてしまう鳥もいるし、じぶんの尾を執拗に追いかけ傷つけてしまう犬もいるし、手を洗いすぎてしまうひともいる。いくつかの動物種では自ら毛を抜いてしまう自傷行為が報告されている。

動物における精神疾患の発動もひとの精神疾患の発動と同じ要因のこともある。
それは家族や仲間の喪失、自由の喪失、ストレス、虐待、トラウマなどが含まれる。

それは、不適切な飼育された動物によく見られる。


Chimpanzees held in captivity show signs of stress (Credit: Jabruson/NPL)
不適切な飼育によりストレスサインを出しているチンパンジー

2011年の研究により、研究施設内で孤立していたチンパンジーや違法商法取引により扱われたチンパンジーにうつやPTSDの兆候が確認された。(
Signs of Mood and Anxiety Disorders in Chimpanzees



“ひとにおける社会的孤立と同じようなことはオウムにも起こっている

ストレスフルなイベントは動物の遺伝子にもその跡を残す。
2014年、家で孤独に飼育されたヨウム(African grey)が遺伝子レベルでダメージを受けたことが報告された。
研究者らはヨウムのテロメアを調べた。ーテロメアとは染色体の末端にある構造部分で遺伝情報などを保護する役割をしていてストレスや加齢の影響を受ける。
孤独に飼育されていた9歳のヨウムの染色体を調べると23歳のヨウムと同程度であった。
(Social Isolation Shortens Telomeres in African Grey Parrots)

社会的に孤立するということはひとと同様にヨウムにとってはストレスが大きく、染色体レベルでその足跡が残る。

Traumatised dogs often show signs of anxiety or PTSD (Credit: Lynn M. Stone/NPL)
トラウマを受けた犬はしばし不安やPTSDの兆候を見せる


たとえば、多くの軍用犬はPTSDを患っていると言われている。
彼らは戦争で心に傷を負った兵士と同様の挙動を見せるのである。
そのためPTSDを患った軍用犬のなかにはひとと同様、パニック発作や不安を治療するための薬剤を用いて治療されることがある。



”Bekoffはハリーと呼ばれている不思議な動きをするコヨーテの子犬を見た。

恐怖に震えるような行動に似たような行動は、大きな自然災害を経験した犬か飼育放棄を受けた犬で見られる。


Coyotes (Canis latrans) lead tough lives in the wild (Credit: Peter Cairns/NPL)
自然界に生きるコヨーテ



”野生動物の精神疾患について調べる作業はトリッキーであった

ハリーと呼ばれるコヨーテについて、動物行動学者のBekoffは「彼は社会に不適応な状態であり、他のコヨーテのことも理解できていないようであった」と言った。「遊び方も分かっていないようであった」とも。

Bekoffは彼の著書(The Emotional Lives of Animals: A Leading Scientist Explores Animal Joy, Sorrow, and Empathy — and Why They Matter)のなかでコヨーテのハリーは自閉症であったと述べた。
しかし、野生動物の精神疾患について調べること事態が非常にトリッキーであった。




An anecdote describes a mentally ill coyote (Canis latrans) (Credit: Tom Mangelsen/NPL)


野生動物における精神疾患が見つかりづらい、トリッキーなことであるにはシンプルな理由があるのかもしれない。ー精神疾患を抱える野生動物はもちろん支援などを受けられるわけではないので、生きるための重要なタスクが実行できないからかもしれない。

異常行動が病気の兆候であるか普通の行動なのかを見極めることは難しい。多くの場合、まず『普通の行動』を定義づけるのは難しい。




科学者は動物の遺伝子に注目し始めた。

Our DNA affects our mental health (Credit: Science Photo Library/Alamy Stock Photo)
DNAは精神の健康に影響を与える


多くの精神疾患は様々な様相をしている。しかし、分かっているのはそれらが遺伝的に強い影響を受けているということである、とメルボルンの神経科学の研究者は語った。


”シナプスは認知プロセスに関与している。

うつ病や統合失調症など多くの精神疾患には異常行動が伴う。これらは異常でない他の行動と同じように遺伝子の影響を受けている。
ある考えとしてひとや動物に異常行動を引き起こす遺伝子を同定し、その起源を解析することにより異常行動の起源を知るということがある。
おそらく当然、精神疾患に関与する遺伝子の多くは脳機能に関与していることが判明した。


Synapses are the links between neurons (Credit: Science Photo Library/Alamy Stock Photo)
神経細胞間に形成されるシナプス


脳の中で最も重要な部分はシナプスである。シナプスは脳細胞に情報を伝えている。シナプスは多くの認知プロセスに関与している。

…続く


■読んでみての感想■

一般的にも動物のこころの問題が語られる機会が増えてきました。彼らとの距離が近づくほど、動物にも私たち同様にこころがあることに気付きます。動物も期待し喜び、不安を感じ苦悩する。

こころのなかを見ることは出来ないので、行動を観察し脳の動きを探ることでそれが理解できるようです。
脳のなかでは電気的な信号をもとに化学的な情報伝達がおこなわれ、こころとからだがリンクされバランスを保っています。なにかで脳が情報伝達をコントロールできなくなると動物やひとにとって困った「ふつうでない状態」になるのでしょう。
今回の記事では神経伝達回路に触れながら動物、そしてひとのこころやそれがバランスを崩した状態について考えていければと思います。
精神疾患の起源、神経伝達回路の仕組み、それに対応する薬物などを知ることで獣医師として動物の身近にいるものとして「困っている動物」が少しでもその不快な状況を脱する一助に貢献できる方法を探ってみたいと思います。




じつは夏からあらたな犬と暮らしています。

2歳のラブラドールレトリバーです。

盲導犬訓練所からキャリアチェンジ犬として我が家へやってきました。
いくつか問題があって盲導犬には不向きということになったのです。





DSC_0207.JPG
私は10年ぶりのラブラドールとの生活なのですが、じぶんの子育てをしながらのラブラドールとの生活なので10年前とは違った感覚ですが楽しく暮らしています。
彼女の経歴を当院にいらっしゃる飼い主さんにお話しすると「試験に落ちちゃったのかー」と声をかけながら頭やおなかをわしゃわしゃと撫でてくれる方(犬はしっぽをぶんぶん振りながらひっくり返り喜んでいました)、優しく首のあたりを掻きながら「子犬じゃなかったからどうしたのかなと思っていたけれどそういう経緯があったのね。お見知りおきをね」と声をかけてくれる方などがいました。犬と暮らしていると犬を通して会話をする機会があり、それは犬がワンクッションに入るからなのか、介するものが犬だからなのか非常に自然に会話が進むように感じます。
毎日いっしょに出勤していますので、お目にかかることもあると思います。よろしくお願いします。




猫もげんきです。

 
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